たつき監督のブロッキング論考
僕は映像を観て「良いな」と思ったショットは、三分割して確認するクセを付けています。
そこで、以前僕が取り上げた「三分割法」について。
#ケムリクサ
#けものフレンズpic.twitter.com/5MccHJpgfI
「線の交点や線上に、被写体が掛からないといけない」
ように思われています。
ただし当然ですが、「そこから動かない場合にのみ三分割法が成立する」とかそういう厳密な決まりはありません。
映像の場合、特にハリウッド映画では、三分割法は「ブロッキング」と併用して用いられます。 pic.twitter.com/OYbbCV3SCP
映像を撮る前に、フレームの構図確認=「フレーミング」が行われ、そこで様々な分割法が利用されるのです。
『2001年宇宙の旅』ならば、こう。 pic.twitter.com/64Imsrb2Qb
映像における三分割法の活用で重要なのは、交点や線上に掛かることよりも、
「フレーム内でアクションがあっても、ブロッキングが崩れないか」
です。 pic.twitter.com/kxEgnlgKpN
適切に配置された事物と、空間バランスによる美です。
「映像における三分割法は、ブロッキングと併用されて、フレーミングの美を生み出す」
なので、三分割法について過去ツイートを見た時、説明不足があったかもと思って補足です。 pic.twitter.com/IazsGOdBHw
例えばこの7話における博士と助手のフレーミングも、
「三分割法によって見出された左右の空間に、対称的にブロッキングされた2人がもたらす、美を感じる」
ということです。
(当然2人ともカワイイ) pic.twitter.com/wo7JYEG9Ru
composition moviesとかrule of thirds等で検索すると、動画や記事が結構ヒットします。
https://gigazine.net/news/20170716-framing-a-crime-drama/ …
これも面白いです。
動画はThe Night Of Framing a Crime Dramaで検索したらまだあるようです
作品を好き嫌いでなく、深まりや広がりをもって楽しめるでしょう。
以上です!
ところで、傾福さんの着ている服も三分割法でサクサク切り取って、美を楽しみたいなぁ〜
(悪意あるフレーミング) pic.twitter.com/wyt1nto7Jl
という話です。
今回は『ケムリクサ』におけるブロッキングという技法に注目し、たつき監督がりんとわかばの関係を、映像でどうやって表現していったかを見ていきます。
#ケムリクサ
#たつき監督
#irodoripic.twitter.com/bp4MCn3IDv
意味が無いカットはありません。
全編通して監督の意図が反映されており、観客に伝えるメッセージが徹底しています。 pic.twitter.com/kc2m1PFmSh
黒セルリアンに必死にしがみつくサーバルちゃん。
敢えて画面下部のサーバルちゃんの足を撮さない。
サーバルちゃんが引きずられる無力さ、追いすがる必死さを伝えるための撮り方、配置です。
黒セルリアンに空間的にも押しつぶされそうな切迫感があります。 pic.twitter.com/HXDOQkIvSO
・ブロッキング(ステージングとも)
と呼ばれます。
irodori作品では、このブロッキングが徹底していて、特に『ケムリクサ』では「りんとわかばの関係の変化」をカット単位で表現しています。 pic.twitter.com/oHMCcerBF2
例えば、2話。
キイロのケムリクサを採取しているりんとわかばの間には、階段を利用して、二人の間に一線を引かせる。
りんの心理的な壁が、3話でも観客に提示されています。 pic.twitter.com/IG9VGDwKTA
それが照れ隠しであることも含めてですが、とにかく「まだ二人の仲は進展しませんよ」ということをたつき監督は強調する。
りんが腕を組んで立っていることが多いのも、演出の一つです。 pic.twitter.com/5hfWPTWBaO
これは、りんがわかばにお礼を言う大事なシーンです。
超ロングショットによって、二人の心的状況が表現されます。
りんはわかばにお礼を言いつつも、構えは崩さずに、上方で優位な位置にいます。 pic.twitter.com/kWDljkZkLP
2人の人物、2つのオブジェクトを関連付け、イメージの強調を図っています。
こうした象徴カットが入ったことで、ターニングポイントとして強く印象づけられます。 pic.twitter.com/FeLuPIO5Qd
続くCパートでは、わかばに動かされたりんが、彼の前に力強く出て歩む。
このカットでは2人以外の人物を撮さないことによって、ここから先は二人の物語が動いていることを予感させます。 pic.twitter.com/NkEc1M5WgV
記憶の葉に触れる前のシーン。
このカットは、7話と対応する構図です。
あの時よりも二人は距離を縮め、更にわかばの後ろにある構造物が大きく描かれています。
わかばのたくましさが、りんと比べても遜色ないほどになったことを表すのです。
そして、背ックス。 pic.twitter.com/YjvYqQJci2
映像におけるブロッキングとは「空間上の表現で言語表現を補助または強調する」という、とても奥深いものです。
この技法に大変長けている時点で、たつき監督が非凡だとすぐ見抜けます。 pic.twitter.com/3Uz4JZpzUX
何故なら、その空間にあるオブジェクトを使って表現する方法なので、物語世界内でしっかり設定されているオブジェクトを全て把握し、使いこなす技法だからです。
しかも、印象的なカットの中のイメージとして伝えるものでないといけない。 pic.twitter.com/nemVIWBsVx
主役のタカオが、恋心を抱くユキノに手作りの靴を贈る為、彼女の足型を取るシーン。
ここでユキノが「実は今、うまく歩けない」こと告げ、タカオとの間に一線が引かれてしまう。
それを被写界深度(ボケ具合)を変えて見せる。 pic.twitter.com/zD9TFIHdGM
ジェット・リー演じる刺客・無名と、中華統一間近の秦王・政とのやり取りが、物語の軸です。
王は暗殺を恐れて、常に100歩離れて他国の人と話すようにしています。
しかし無名が他の刺客たちを倒してきた話を聞き、側に近付くことを許します。 pic.twitter.com/JS5pH63Fao
しかし王は涙をのんで、無名を処刑します。
無名の語りが進むごとに王に近づく演出で、二人の心理的な距離を表現する。
終盤の超ロングショットでは、理解者がいなくなった王の寂しさが分かります。 pic.twitter.com/TuSb86NloP
・事物を使ったブロッキング
・人物の関係性を、距離で表現するブロッキング
が使われています。
たつき監督が『ケムリクサ』で使っているのも、これらと同等のテクニックです。
しかし、新海作品やチャン・イーモウ作品と違い、かなり見せ方に工夫が必要だった。 pic.twitter.com/p2HfWBRwEe
『ケムリクサ』の場合は、荒廃した空間を活用することを前提に、数少ないオブジェクトを組み合わせる。
それを可能にしたirodori三人衆はじめ、スタッフの高い技術力は驚くべきことです。 pic.twitter.com/XgBkzbF6Dl
このブロッキングに注意を払ってirodori作品を観れば、かなり細かいところまで人物・事物の配置が決められていることに気付けると思います。
そして、次回作ではどんな構図の妙を見せてくれるか楽しみです! pic.twitter.com/2mKGxS9CTE
・『ケムリクサ』をはじめ、irodori作品ではブロッキングという映像技法が使われている。
・ブロッキングとは「フレーム内で、セットで人物・事物をどこに配置するか」でメッセージを作る映像技法のこと。
・その空間内にしかないオブジェクトを使って表現する方法なので、物語世界内でしっかり設定した上で使いこなす高等技術であり、irodoriの精緻な仕事。
以上!終わり!
四島突破!
みんみ解散!
じゃあ俺、りょくちゃんのスカート丈の最適な高さをブロッキングする為にも、
両脚全体をじっくり採寸してくるから… pic.twitter.com/LGobnNdrmL
⚡️たつきは、りんとわかばに「線」を引く~『ケムリクサ』に見る映像技法「ブロッキング」の妙~#ケムリクサ#たつき監督#irodorihttps://t.co/Lcx5ORmavu
— マサムネ内記 (@masamune_nike) 2019年12月11日
コメント
めっさ勉強になる…。
ほんと勉強になるナ
わかりやすい言葉でスッと解説してくれる所もいいよな
噛み砕いて話すのって難しいのに、ありがたいよ
相変わらずすげえなこの人
そしてもちろんこの技法を実用してる製作者の方々も
たつきがぁ 捕まえてぇ
たつきがぁ 画面端ぃ
個人的にすごく気になってるのが、この人の垢名
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E8%A8%98
たつき「そうやったんか・・・勉強になるわ・・・」
ケムリクサブロッキングの話は4月頃にけもフレショットコンポジションの人が動画にしてたけど、秋ごろにアカウントごと消滅してしまって悲しい
背景の色とかこれ見よがしに使ってくる映像作品とかも有るけど、
ともかく、心理描写を無意識にも差し入れてくる表現なんだな。
尤も、映像制作や作画とかに関わる人間でないと知った所で意味無さそうだがw
あとは、サンプル画像を買い取る会社に売る写真の撮り方・・・とかかなぁ・・・
タイトルでスト3のアレかと思ってしまった
ブロックが上手い監督ならもう1人知ってるで
※8
あれわかりやすい動画だったね・・・
残念
ブロッキング論考ってツイッターの話かと思ったら違った
この人プロなんじゃないだろうか…
※13
あぁ、てっきりKMR監督だと思ってたぜ
※8※12
ツイッター垢は残ってるんだけど
youtubeにアップしてくれないかねえ
ちなみにツイッターにショート版が残ってる
https://twitter.com/wlyvs/status/1135088732371992576
※8
一応bilibili動画に「SHOT COMPOSITIONS OF KEMONO FRIENDS」と
https://www.bilibili.com/video/av37985676/
「KEMURIKUSA THE BLOCKING」の転載動画はある
https://www.bilibili.com/video/av54457908
このショットコンポジションの人が作ったけものフレンズMADは
bilibiliで「graphr けものフレンズ」って検索すれば出てくる
※10
レッツゴージャスティ、、タツキィーーン!!
バシバシバシバシバシバシバシバシ!
たつき「クラッチ繋いでればこんなもんわやわぁ」
さすがだわ
そしていつも通りのオチがなんか安心するw
基本に忠実だったりテクニックを凝らしたり。
そりゃ一視聴者はもちろんプロも唸らせる一流クリエイターと認められるよなぁ…
マサムネ内記
そう言えば榊さん、どうなったかなぁ?
今年中にアナウンスが無いなら
ふぁねるの中身と手打ちになったかなぁ?
あの動画って消えてたのか…実にもったいない
受け売りだけど、ミドリちゃんバスの窓枠を使って見やすいキャラ配置をしていた話と
別のところで、明るいりな達が増えてるおかげで画面が埋まって、絵から受けるネガティブさが和らいでるって話は
天啓ものだったね
勉強になる!が、活用できる日が来るかどうか・・・
必要最低限の要素や製作期間で四捨五入形式で無駄のない洗練された表現
”神は細部に宿る”と”なろう系主人公(褒め)”を体現してるのは伊達じゃないな…
ぼーっと見ているけど、
何ていうのか”はっ”とする場面カットがいくつも出てくるよね
技術的な説明で補完されて嬉しい
そして、はかせとじょしゅ(当然2人ともカワイイ)←圧倒的説得力
前半は勉強になった
後半の、建築物の長さがキャラの心理的優劣の理解を助けてるかは疑問
この人に「〇〇を証明しなければ私との議論に勝つことはできません」とかしつこくケンカ売ってたのがアウグストね。
傾福さんで草生えた
コンテとかVコンテみたいな絵作りの時点で決めてないとできないよね……コレ。
心情とか内情を表現するのに空間(距離)や役物を使うってのは昔の美術作品からある手法だけど、それを映像作品に盛り込むとなるとキツい。
……というのも、こういうのは一回でも入れると全編に渡って入れないといけなくなるからだ。
一回でも入れた後に無作為に作った構図を混ぜると、その表現間で齟齬が生じて誤解が起きる。なので下手すると該当キャラの出る全てのカットに意味を持たせないといけないし、話の展開上として必要な場面でも無用にキャラ同士を近付けたり離したりができなくなる。心情として離れてるキャラ同士を近付ける場合は代わりに、背景とか何かしらで線を入れないといけない。逆も然り。心情として近付いてるのに距離がある構図では、背景の役物を使ってキャラ関係を描写する。
これを不自然でないように、そう露骨にならないように、初見では気付かれないように配置しないといけない。「監督の人そこまで(ry」とか思う程度にしないといけない。
でもあくまで関連付けなので無理に線引きとか同じ手段で描写しなくても良いが、誰も分からないようでは印象に残らない。かなりバランス感覚が必要。
離れてる上に線が入ってる1話時点では、どこまで警戒されてるのやら……
※23
アニメや映画見るのに役立つやん?
※28
俺はイキナリの「背っクス」で吹いたわ
※29
そりゃ、あいつの代わりに続編作れといわれても
常識的な判断ができるスタジオは丁重にお断りするよなあ
※17
ありがとう
※29
そうだよね。わかってしまうと意味がないとは言わないが、
視聴者にとって自然な心象を生むことにはならないわけだよな。
自然な立ち位置や風景や構図でそれを印象づけるということで
サブリミナルのように深層心理に植え付けると。
しかし、たつき監督は手法をわかってて実践したんじゃなくて
突き詰めてやり直して、トライアンドエラーもたくさんやって
その結果、そこに自然と行き着いていたってこともあるんじゃないかな
こういう手法や表現方法の理論って「観る側の心理」を
なぜ良いと感じるのかという視点で掘り下げてるもんだと個人的には思う
そして、その理論は無数にあるわけで。逆もそうだがw
創るってすごいよな
創る前は全てが自由な世界に、選択することで不自由を強いられながら
最後は全ての想いを断ち切って結論を出さないといけないんだから。
ケムリはけものの時よりも画面構成がより凝ってる印象だったけど、なるほどねえ
※23
フツーに写真とか動画撮るとき役立つよ。
ここまでくるともう本人も知らないうちに無意識にやってんじゃねーかって思うわ
映像関連ではほとんどの場合意識するんだろうけど、なんかたつき監督に関してはそういうの一切意識しないでも(なんとなくいいなこのアングル)みたいな感じで成立させているような気がする
あくまで気がするだけだからな!
たつき監督に関しては意識的にやっている部分と無意識にやっている部分のバランスが絶妙で調和が取れているように思える。意識的にせよ無意識的にせよこれは天才のそれ。星野源はじめ多くの一流クリエイター達が舌を巻くのが分かる。
これ知ってる!春頃にじゃぱり兄貴が言ってた!
自分が見えてる映像がそうなってるから
そのまま作ってるだけなんやけどな〜って感じなんだろうかね
けもフレ・ケムリのストーリもそうだけど
演出についても変態的天才なんだろう
けもフレ一期はいろいろあったしKFP2関連企業はムナクソだけど、
たつき監督は過酷なスケジュールと強烈なプレッシャーの中で進化し
結果としてケムリクサまで繋がったことは素直に感謝するよ
※36
それこそが、「体得」とか「会得」とか呼ばれてるものなんでしょうな
もういちいち、自分の中の引き出しの、どの技術を使うぞ、とか意識しなくても自然と作れるという
当然、それは理論と実践の両輪を使い続けた結果だと思うし、
というか、本来的に何かの技術を勉強するっていうのは、そこまで行かなきゃダメなんだろうなーとか
黒澤映画見るとイヤでも意識せざるを得ないよね
実に奥深いな
感覚的に美しいと思えるものの仕組みに触れあえる
素人が見ても魅力的に見えるんだから、すごいよなあ…。
解説されて、それがスッと飲み込めて納得できるのがまた良い。
シャイニングとけもフレ10話を比較したのがお気に入り。
「ハロー、ダニー。たつきのアニメを一緒に見ましょう~『けものフレンズ』と『シャイニング』の映像比較・分析論考~」 https://twitter.com/i/events/1198634886732500992
同じ様に□も分析してみたら面白いとかも?
あぁ、視線の時点で滅茶苦茶やったなぁ。
こういう視点から観れると楽しいだろうな
ニコニコのブロッキングの動画消えてる(泣)
なんでや!
「基本に忠実に」をトコトン極めると「観客の方が内容を解釈したくなるアニメ」に仕上がるって訳か。
人間にはその認識能力を司る「悟性」てもんがありましてぇ...「説明しなくても感じ取れる」て要素がある。腕を組んで高い所から仁王立ち=威圧と感じるのもその悟性がなせる技、かも?
ここで挙げられてる「人と人の間に線が引かれる=分断」という話にしたって、直感的には理解できてもなんで?どうして?て聞かれたら困るでしょ?
サンライズのハゲが記した上手下手理論とかここで挙げられてるブロッキング論とか、そういった映像作品の技法の数々ってそういった人間の悟性に訴える為の技術かもと冷奴。
観客の悟性を刺激する→なにこれなにこれ~!?→すっごーい!というコンボがirodori作品の魅力の一つ、かもしれない。
※17
ナイスすぎる
興味深い
結構消えてる動画多いんだよなー
ガッkoyaさんのワカバ中心のケムリクサ感想動画も凄く良かっただけに残念
■の人達もこれぐらい理解しているつもりだし実践出来ていると彼らは思っている
当然■にも取り入れられている気になっている
※51
俺もこないだアレが消えてるのに気が付いて愕然とした
本来的には正しいんだけど、ケムリクサは二次利用に厳しいな
※53
ケムリが厳しいのではなく、ニコニコがケムリに厳しい可能性もあるけどな……
たつき監督を含むボカロにも理解あるirodori勢が古巣である(と言えるかは謎だけど)ニコニコで強権を振るうとは思えない。福Pも同様。
たつき「そうだったんかあ・・・」
何気なく見てたアニメでよくよく見てみると
壁や線を利用してまだ相手のことを信用してないとか、
台詞とともにその障害を越えて接してきたりして、心を少し許したとか勇気を持って踏み込んできたみたいな場面で確かに使われてたわ
そういうアニメって結構好きだったりキャラの言動に違和感無かったりするんだよなぁ
新しい見方が出来て今後も楽しくアニメ見れそうですわ
※17
亀レスになるけど動画制作者本人が
Twitterで分割して全編投下してたんでリンク貼っとく
「けものフレンズのショットコンポジションについて」
1/2 https://twitter.com/wlyvs/status/1218204623422410752
2/2 https://twitter.com/wlyvs/status/1218204767651950598
「ケムリクサのショットが美しい理由「フィルム・ブロッキング」」
1/2 https://twitter.com/wlyvs/status/1222495453490511873
2/2 https://twitter.com/wlyvs/status/1222495611817091072
※直球の下ネタは控えるようお願いします。