他者の考察への攻撃的・皮肉的、茶化すようなコメントは控えるようお願いします。

たつき監督のブロッキング論考

考察 (57)

次回以降の論考で、改めてirodori作品のフレーミングによる美を取り上げたいと思っていますので、その前段階としての呟き。

僕は映像を観て「良いな」と思ったショットは、三分割して確認するクセを付けています。

そこで、以前僕が取り上げた「三分割法」について。
#ケムリクサ
#けものフレンズpic.twitter.com/5MccHJpgfI
一般的には
「線の交点や線上に、被写体が掛からないといけない」
ように思われています。

ただし当然ですが、「そこから動かない場合にのみ三分割法が成立する」とかそういう厳密な決まりはありません。

映像の場合、特にハリウッド映画では、三分割法は「ブロッキング」と併用して用いられます。 pic.twitter.com/OYbbCV3SCP
ブロッキングとは、キャメラのフレーム内(画面枠内)に、人物や事物をいかに配置するか考える技法のことです。

映像を撮る前に、フレームの構図確認=「フレーミング」が行われ、そこで様々な分割法が利用されるのです。

『2001年宇宙の旅』ならば、こう。 pic.twitter.com/64Imsrb2Qb
映像は写真と違って連続する動きを撮っており、また人物もアクションするものなので、三分割法による交点や線上に全て集まる訳ではありません。

映像における三分割法の活用で重要なのは、交点や線上に掛かることよりも、
「フレーム内でアクションがあっても、ブロッキングが崩れないか」
です。 pic.twitter.com/kxEgnlgKpN
映像の視覚的快楽は、フレーミングによって得られるものが多い。
適切に配置された事物と、空間バランスによる美です。

「映像における三分割法は、ブロッキングと併用されて、フレーミングの美を生み出す」

なので、三分割法について過去ツイートを見た時、説明不足があったかもと思って補足です。 pic.twitter.com/IazsGOdBHw
irodori作品は、このフレーミングを活用し、美しくかつ集中力を喚起する映像を作っています。

例えばこの7話における博士と助手のフレーミングも、

「三分割法によって見出された左右の空間に、対称的にブロッキングされた2人がもたらす、美を感じる」

ということです。
(当然2人ともカワイイ) pic.twitter.com/wo7JYEG9Ru
なお、映像におけるブロッキングや三分割法については、海外で多く取り上げられてます。

composition moviesとかrule of thirds等で検索すると、動画や記事が結構ヒットします。

 https://gigazine.net/news/20170716-framing-a-crime-drama/ 

これも面白いです。
動画はThe Night Of Framing a Crime Dramaで検索したらまだあるようです
日本でもこうした技術面で作品を観る人が増え、クリエイターに刺激を与えるような批評が多くなればと。

作品を好き嫌いでなく、深まりや広がりをもって楽しめるでしょう。

以上です!

ところで、傾福さんの着ている服も三分割法でサクサク切り取って、美を楽しみたいなぁ〜
(悪意あるフレーミング) pic.twitter.com/wyt1nto7Jl
たつ鬼は整理整頓が上手い子。
という話です。

今回は『ケムリクサ』におけるブロッキングという技法に注目し、たつき監督がりんとわかばの関係を、映像でどうやって表現していったかを見ていきます。
#ケムリクサ
#たつき監督
#irodoripic.twitter.com/bp4MCn3IDv
まず、たつき監督の映像作家としての特長は、人物・事物(いわゆるオブジェクト)と空間をしっかり整理出来ており、「画面の枠内で何を見せ、伝えたいか」が明確であること。

意味が無いカットはありません。
全編通して監督の意図が反映されており、観客に伝えるメッセージが徹底しています。 pic.twitter.com/kc2m1PFmSh
例えば『けものフレンズ』12話。
黒セルリアンに必死にしがみつくサーバルちゃん。

敢えて画面下部のサーバルちゃんの足を撮さない。

サーバルちゃんが引きずられる無力さ、追いすがる必死さを伝えるための撮り方、配置です。

黒セルリアンに空間的にも押しつぶされそうな切迫感があります。 pic.twitter.com/HXDOQkIvSO
こうした「フレーム内で、セットで人物・事物をどこに配置するか」でメッセージを作る映像技法は

・ブロッキング(ステージングとも)

と呼ばれます。

irodori作品では、このブロッキングが徹底していて、特に『ケムリクサ』では「りんとわかばの関係の変化」をカット単位で表現しています。 pic.twitter.com/oHMCcerBF2
出会ったばかりの二人には、当然ながら距離があります。

例えば、2話。
キイロのケムリクサを採取しているりんとわかばの間には、階段を利用して、二人の間に一線を引かせる。

りんの心理的な壁が、3話でも観客に提示されています。 pic.twitter.com/IG9VGDwKTA
4話では、りんが柱に隠れることで、わかばにまだ気を許せない心理を表す。

それが照れ隠しであることも含めてですが、とにかく「まだ二人の仲は進展しませんよ」ということをたつき監督は強調する。

りんが腕を組んで立っていることが多いのも、演出の一つです。 pic.twitter.com/5hfWPTWBaO
転機となるのが7話。

これは、りんがわかばにお礼を言う大事なシーンです。
超ロングショットによって、二人の心的状況が表現されます。

りんはわかばにお礼を言いつつも、構えは崩さずに、上方で優位な位置にいます。 pic.twitter.com/kWDljkZkLP
背景には、りん側に巨木があり、わかば側に小さめの木がある。

2人の人物、2つのオブジェクトを関連付け、イメージの強調を図っています。

こうした象徴カットが入ったことで、ターニングポイントとして強く印象づけられます。 pic.twitter.com/FeLuPIO5Qd
8話終盤では、わかばの涙と決意が強く打ち出されるシーンで、りんを小さく見せる。

続くCパートでは、わかばに動かされたりんが、彼の前に力強く出て歩む。

このカットでは2人以外の人物を撮さないことによって、ここから先は二人の物語が動いていることを予感させます。 pic.twitter.com/NkEc1M5WgV
そして、10話。
記憶の葉に触れる前のシーン。

このカットは、7話と対応する構図です。
あの時よりも二人は距離を縮め、更にわかばの後ろにある構造物が大きく描かれています。

わかばのたくましさが、りんと比べても遜色ないほどになったことを表すのです。
そして、背ックス。 pic.twitter.com/YjvYqQJci2
このように、りんとわかばの関係は、常に印象的なカットで表現されています。

映像におけるブロッキングとは「空間上の表現で言語表現を補助または強調する」という、とても奥深いものです。

この技法に大変長けている時点で、たつき監督が非凡だとすぐ見抜けます。 pic.twitter.com/3Uz4JZpzUX
ブロッキングは、誰でもやれるようで、実はかなり難しい。

何故なら、その空間にあるオブジェクトを使って表現する方法なので、物語世界内でしっかり設定されているオブジェクトを全て把握し、使いこなす技法だからです。

しかも、印象的なカットの中のイメージとして伝えるものでないといけない。 pic.twitter.com/nemVIWBsVx
たつき監督以外の効果的な使用例では、まず新海誠監督の『言の葉の庭』。

主役のタカオが、恋心を抱くユキノに手作りの靴を贈る為、彼女の足型を取るシーン。

ここでユキノが「実は今、うまく歩けない」こと告げ、タカオとの間に一線が引かれてしまう。
それを被写界深度(ボケ具合)を変えて見せる。 pic.twitter.com/zD9TFIHdGM
もう一つは、チャン・イーモウ監督作品『HERO』。

ジェット・リー演じる刺客・無名と、中華統一間近の秦王・政とのやり取りが、物語の軸です。

王は暗殺を恐れて、常に100歩離れて他国の人と話すようにしています。
しかし無名が他の刺客たちを倒してきた話を聞き、側に近付くことを許します。 pic.twitter.com/JS5pH63Fao
対話を通じ、統一に向かう王の孤独を真に理解できたのは刺客たちだったことが明らかになる。
しかし王は涙をのんで、無名を処刑します。

無名の語りが進むごとに王に近づく演出で、二人の心理的な距離を表現する。

終盤の超ロングショットでは、理解者がいなくなった王の寂しさが分かります。 pic.twitter.com/TuSb86NloP
この2作品では、それぞれ

・事物を使ったブロッキング
・人物の関係性を、距離で表現するブロッキング

が使われています。

たつき監督が『ケムリクサ』で使っているのも、これらと同等のテクニックです。

しかし、新海作品やチャン・イーモウ作品と違い、かなり見せ方に工夫が必要だった。 pic.twitter.com/p2HfWBRwEe
ブロッキングを印象づけるには、作画や美術等も含めて、繊細なバランス感覚と美意識が必要です。

『ケムリクサ』の場合は、荒廃した空間を活用することを前提に、数少ないオブジェクトを組み合わせる。

それを可能にしたirodori三人衆はじめ、スタッフの高い技術力は驚くべきことです。 pic.twitter.com/XgBkzbF6Dl
『ケムリクサ』におけるブロッキングの妙は、想像以上に精緻を極めたものになっています。

このブロッキングに注意を払ってirodori作品を観れば、かなり細かいところまで人物・事物の配置が決められていることに気付けると思います。

そして、次回作ではどんな構図の妙を見せてくれるか楽しみです! pic.twitter.com/2mKGxS9CTE
長くなりましたが、結論です。

・『ケムリクサ』をはじめ、irodori作品ではブロッキングという映像技法が使われている。

・ブロッキングとは「フレーム内で、セットで人物・事物をどこに配置するか」でメッセージを作る映像技法のこと。
・りんとわかばの関係の進展が、人物の距離やオブジェクトの配置で表現され、ストーリーを補強するイメージとして効果的に働く。

・その空間内にしかないオブジェクトを使って表現する方法なので、物語世界内でしっかり設定した上で使いこなす高等技術であり、irodoriの精緻な仕事。
・これまでのirodori作品にもブロッキングは使われており、次回作でも発見出来るはず。

以上!終わり!
四島突破!
みんみ解散!

じゃあ俺、りょくちゃんのスカート丈の最適な高さをブロッキングする為にも、
両脚全体をじっくり採寸してくるから… pic.twitter.com/LGobnNdrmL