他者の考察への攻撃的・皮肉的、茶化すようなコメントは控えるようお願いします。

irodoriは息抜きアニメでも手を抜かないという考察

へんたつ, 考察 (220)

irodoriは息抜きアニメでも手を抜かない。
という話です。

今回は、irodoriの趣味のアニメこと『へんたつ』を映像分析し、
「編集によって生まれる映像の楽しさ」を考察してみたいと思います。
#へんたつ
#irodori
#たつき監督
#ケムリクサpic.twitter.com/9niwUMEkor
『へんたつ』は、「鬼(たつ鬼)」と「猫(へん猫)」が二人で四方山話をする、会話劇形式の映像作品。

DVDにもなりましたが、irodoriのTwitterやニコ動などでも公開されています。

ゆっこさんによる美しい背景美術も相まって雰囲気が良く、irodoriの今を伝えるエッセイのような作品です。 pic.twitter.com/WoOpdE25Lt
けもフレ1期〜ケムリクサ間で何が起きたかを察する内容もありますが、今回は会話よりも「映像の編集」に注目。

この作品は、ただ二人の会話を撮っただけのように見えますが、

「二人の会話に観客を引き込むための編集」

がとても見事なのです。 pic.twitter.com/J1QQ9dJgyG
例として、今年の9/13公開版を観てみましょう。

長さ2分強の作品ですが、この中で「3つの距離感の違うショット」を組み合わせています。

「近距離ショット」
「中距離ショット」
「遠距離ショット」

です。
(ショット=カットとほぼ同義。画面切替した=カットした、です)
 https://twitter.com/irodori7/status/1172516800325488640?s=09 
「近距離ショット」は
①へん猫のクロースショット
②たつ鬼のクロースショット

いわゆるバストショットです。
肩から上を撮って、表情や手の動きを見せる。 pic.twitter.com/humvtZJldF
「中距離ショット」は
③へん猫の右側から撮ったショット
④たつ鬼の左側から撮ったショット
⑤二人の正面から撮ったショット

二人の位置関係を見せるショットです。
引きのショットで、足も含めた全身のアクションを撮っています。 pic.twitter.com/PTIPlgoPaR
「遠距離ショット」は
⑥二人の正面から撮ったロングショット

「ここは南口」の案内表示が見えるくらいに、⑤のショットより引いて撮っています。
(そこまで遠距離というほどではないですが、便宜上) pic.twitter.com/sFC2NlbFh4
①〜⑥までは、撮影のショット。
ここに加えて、

⑦イラストショット

を含めて、9/13版『へんたつ』は編集されています。 pic.twitter.com/BC6ezTb7At
それぞれのショットを、今度はショット数で比較しましょう。

近距離ショットは、9
中距離ショットは、13
遠距離ショットは、1
イラストショットは、10

です。 pic.twitter.com/WB0BJ4GtuS
これらショットの種類と数を比較することで、
『へんたつ』編集の妙技が見えてきます。

すなわち、

・たつ鬼が話し手、へん猫が受け手の近距離ショット①②の切り返し時は「話の引き込み」

・二人の話が進んでいるところや、談笑したところを中距離ショット③④⑤で「間を取る」
・二人で過去に見た、話した、思ったことはイラストカット⑦でディフォルメ(誇張)し、観客の興味を惹かせる

・遠距離ショット⑥で一段落を入れた時が、会話の一段落

という編集技術です。
近距離ショット①②は、話の取っ掛かりや盛り上がりで使います。
いわば、へん猫とたつ鬼が、互いに身を乗り出す時です。
これが左右にある1カメ・2カメで撮られている。

対話時の「切り返しショット」です。
会話のテンポを作るが、多用されると「暑苦しく、疲れる」映像になる。 pic.twitter.com/nQYxkPMF7S
そこで、中距離ショット③④⑤で「間を取る」。

相槌が続いてきた時や、談笑が出た時に、ちょい引きのショットにすることで空間が生まれます。

近距離ショットで感じた会話の熱を、そこに開放。
近距離ショットと中距離ショットがほぼ同数なのは、「会話の熱→開放」を繰り返したためです。 pic.twitter.com/w0Y9s7JhLA
ここで大事なのは、3カメまで使っていることです。

1・2カメはへん猫とたつ鬼に付きますが、3カメは中立的で真ん中から撮っている。

3カメは、最も観客の視点に近い。

そして、二人の正面から撮ったショット⑤が、『へんたつ』に大事な「観客との空間共有」と「息抜き感覚」を与えるのです。 pic.twitter.com/DaxtcTkAUU
ホッとした空間やゆるさを映像で表現するには、近距離ショットの多用では暑苦しい。

中距離ショットも挟みますが、「左右からのショット切り返し」だけでも落ち着かない。

そこで3カメ。
「正面から撮って、二人同時に見られるショット」を入れる。 pic.twitter.com/HAfcOyJGCF
これで、へん猫・たつ鬼・観客も含めて空間を共有出来る。

一緒に「アハハ!」と笑えるような空間が観客の目の前に出来た。
映像的にも、二人に近付くスペースを空けてくれたのです。

同時に、中距離ショットの映像として最も「空間が広く、ゆるい」ので、「息抜き感覚のショット」にもなります。 pic.twitter.com/791YIRXIwR
他に挟まれるイラストショット⑦は、ディフォルメ(誇張)されることで、過去の話を面白く伝えるための効果を持ちます。

またカメラの揺らしを入れたりクロースアップしたりすることで、ギャグのテンポが生まれます。 pic.twitter.com/WwwCL3ewhw
イラストショットにおける注目点がもう一つ。
背景が白、それも明度を落としたものです。

ゆるいタッチのイラストなので、コントラストが高くないようにしています。

フル版では、床のデザインを取り入れて「床にイラストを描いて話してる」ような視覚的遊びも生んでいます。 pic.twitter.com/DPvn3NSw0l
そして、一段落が入ったことを明示するものとして、遠距離ショット⑥があります。

カメラを引かせたことで、空間的に最も広く、被写体から遠くなった。

二人の会話を遠ざけ、残念ながら「会話を閉じにかかる段階」になった訳です。 pic.twitter.com/jeqlhX0MPw
ここまで見てきたことを踏まえれば、以前発表された『へんたつ』8/3版やフル版でも、同様の編集傾向であることを発見できます。

①~⑦の基本カットに加えて、フル版では風景カット⑧も挟まれています。

二人の移動を説明しつつ、台詞なしで美術表現に観客が没頭できるのが良いですね。 pic.twitter.com/E6m7rhfkN4
『へんたつ』の魅力はいろいろですが、やはり
「二人の会話に観客を引き込むための編集」
が優れていることだと思います。

会話を、映像として編集することで飽きさせない。
元々二人が極端に早くない、わっと盛り上がり過ぎない会話をしていて、そのテンポを編集によって「ゆるさ」を維持している。 pic.twitter.com/5Pb5kOn870
ただし、これらの「切り返しショット」の編集技術自体は、かなり古典的です。

大体100年前には、アメリカやソ連、ドイツで映画の編集理論の基礎が確立しています。

『へんたつ』が安定して観られるのも、たつき監督がいつも選んでいる手法が古典的かつ王道であるためです。 pic.twitter.com/UTgHWMgDbe
映像における編集の重要性は、かなり高い。
irodoriの映像技術・リテラシーの確かさは、編集技術も当然含めてです。

たつき監督は「撮る人」としての才能がありますが、撮影と編集の才能も当然繋がっています。
カメラのフレーミングも含めて、本当に「切り貼り」が上手く、誠実な人だなと思います。 pic.twitter.com/aFg06K7dNv
でもやっぱり、へん猫とたつ鬼のやり取りを見て「irodoriが元気にアニメを作れるようになって本当に良かった」と思うのが、一番の楽しみかもしれません。

そして皆さんは思うことでしょう。
「まだ作らへんの…?」
「まだかのう…?」

我々は「最も謙虚なネズミ」でありたいものです! pic.twitter.com/ECHa0PYQrQ
結論です。

・『へんたつ』は一見ゆるい作品だが、「二人の会話に観客を引き込むための編集」が見事である。

・近距離ショットの切り返しから、中距離ショットを繋ぎ、暑苦しさを避け、観客も少し近づける空間を作る。

・イラストや風景ショットも挟み、会話の一段落で遠距離ショットを使う。
・元々二人が極端に早くない、わっと盛り上がり過ぎない会話をしていて、そのテンポを編集によって「ゆるく」維持している。

・切り返しショットは古典的かつ王道の編集技術なので、安定して観られる。

・息抜きアニメと言いつつ、一切手を抜かず編集している。プロフェッショナルな姿勢。
・続きまだ作らへんの…?

・そろそろじゃないかのう…?

以上!終わり!
台風で新宿バスタ封鎖!
みんみ解散!

じゃあ俺、たつ鬼に催眠アプリ使って
犬の真似とマーキングさせてくるから… pic.twitter.com/CWqoysCGiN